本日は、褥瘡(じょくそう)、いわゆる「床ずれ」についてご紹介いたします。褥瘡とは、自分の体重による圧迫が長時間同じ場所に続くことが原因となって生じる皮膚疾患です。中でも、一日中寝たきりで日常的に介護が必要な方、半身不随などで体が麻痺している人などの自分で体を動かすのが不自由な方に起こりやすい皮膚病変です。もし、床ずれを起こしてしまった場合はどのような症状が現れるのでしょうか。床ずれは、その程度や進行度によってⅠ~Ⅳ度と段階ごとに分けられます。Ⅰ度は初期段階で、Ⅱ度からⅢ度と進むにつれて重篤になります。
〇Ⅰ度
褥瘡の初期段階です。はじめは表皮という皮膚の最も浅い部位に症状が出現します。患部には、発赤や少しただれたような糜爛(びらん)が見られます。
〇Ⅱ度
褥瘡がさらに進行した状態です。真皮という皮膚の中層まで障害が及んだ状態で、皮膚潰瘍などが見られます。水疱(水ぶくれ)が現れることもあり、細菌感染を起こしやすい状態です。
〇Ⅲ度
かなり褥瘡が進行した段階を指します。皮膚の最下層である皮下組織にまで障害が及んだ状態で、皮膚潰瘍や欠損が皮下脂肪まで達しています。うみが出ている場合は感染症を起こしている疑いもあります。
〇Ⅳ度
褥瘡の最終段階です。傷口は相当深くなり筋肉や骨にまで障害が及んだ状態で、見た目にも骨が露出して見えるほど進行しています。進行した虫歯のように骨が壊死(腐骨)して黒ずんでしまうこともあります。重篤な合併症を引き起こすこともあり、危険な状態です。
では、褥瘡が生じないようには具体的に何をすればよいでしょうか。床ずれ対策として必須なのが体位交換です。体位交換とは、仰向けの状態から横向きの状態へ体の向きを変えて体圧を分散し、同じ部位に長時間の負荷がかかり続けることを避ける方法です。健康な人が床ずれを起こさないのは、就寝中に無意識に寝返りを打っているからです。自分で寝返りが出来ない方には、体位交換を実施する必要があります。
また、床ずれを予防するためには皮膚を清潔に保ち、適切なスキンケアを行っていくことも大事だといえるでしょう。肌の弱い方は、刺激の弱い弱酸性の石けんをよく泡立ててから洗います。高齢者は特に皮膚が弱いため、やさしく撫でるようにして洗いましょう。また、乾燥すると床ずれを起こしやすくなります。体を拭いた後は、保湿剤などを塗るようにしましょう。
床ずれを治療していくにあたっては、大きく分けて3つの治療法があります。1つは薬を使用した治療法、もう一つはドレッシング材(被覆材)を用いた治療法、そして最後は外科手術による治療法です。
床ずれを治療する際の第一選択は外用薬です。クリームや軟膏など基剤は様々で、その状態によって様々な種類の薬を使い分けていきます。実際にどのように治療法を選んでいくかは医師と相談し、治療効果の経過も見ながら判断していくことになります。外用薬と併用して用いられるのがドレッシング材です。ドレッシング材とは、直接傷を覆う被覆材で、傷を保護する、乾燥を防ぐ、浸出液を吸収するため患部の保護に適しています。褥瘡の外科的処置はデブリードマンとよばれ、壊死組織を切除し洗浄する処置のことです。壊死した組織を、メスを用いて切除します。処置後は、その後の定期的なケアや皮膚科医による定期的な診察が重要となりますので、かかりつけ医との提携が不可欠です。
いかがでしたか。ご自宅に介護中の方がいらっしゃる場合は、床ずれの可能性が生じる場合がありますので、留意してください。あいおいクリニック皮膚科アトレ目黒では、褥瘡の診断や、専門の医療機関への紹介を実施しております。
日付: 2017年11月25日 カテゴリ:皮膚科