今回は皮膚病変の中でも内科的疾患とかかわりの深い、デルマドロームという皮膚病変を紹介します。
みなさんは、デルマドロームという言葉を聞いたことがありますか。デルマドロームとは、内臓病変と関係する皮膚病変のことをいいます。内科的疾患が形をとって皮膚に現れたものと考えて良いでしょう。デルマドロームは、悪性腫瘍に関するもの、内分泌障害に関係するもの、膠原病など極めて多岐にわたります。
デルマドロームは、大きく2つに分かれます。1つ目が、皮膚科医の視診によって内臓病変を特定できる直接デルマドロームで、もう一方はすぐに判別はできないものの、経過などによって内臓病変を特定できる間接デルマドロームです。デルマドロームが2つに分かれることを念頭に置いた上で、大まかな臓器疾患に分けてみていきましょう。
まずは、内臓悪性腫瘍に伴うデルマドロームです。直接デルマドロームは皮膚の転移で、間接デルマドロームは、内臓悪性腫瘍に併発する可能性の高い皮膚疾患と、反応性皮膚病変の二つに分けられます。中でも、強い皮膚掻痒症や紅皮症が見られる場合は悪性腫瘍に結び付く可能性が高いと言われています。悪性腫瘍に結び付く可能性の高い疾患をいくつかまとめます。
①皮膚筋炎 以前から、胃がんや肺がんとの関係性が主張されていました。極めて強い掻痒、日光過敏などの症例があると併発しやすいといわれています。
②黒色表皮腫 主に鼠径部や腋窩などに、黒褐色の隆起が出現します。良性型、悪性型、仮性型の3つに大きく分類されます。高齢者の場合は、悪性型で胃がん等の合併を伴う場合が多いため、注意が必要です。見慣れない黒色の皮疹が出現した場合は、皮膚科医の診断を仰ぎましょう。
③多発性老人性疣贅 きわめて強い掻痒が特徴で、別名をレーザー・トレラ徴候ともいいます。大腸がんなどの内臓悪性腫瘍を併発することがあるため、気を付けましょう。
④Sweet病 熱発や末梢血液中の抗中球増加によるもの、好中球湿潤性紅斑を特徴とする疾患です。骨髄性白血病や骨髄異形成症候群の合併が考えられることも多いのですが、関節リウマチなどの自己免疫疾患による場合もあります。
次に紹介するのが、糖尿病などの内分泌疾患に関するデルマドロームです。内分泌臓器とは甲状腺、副腎、下垂体などホルモンを生成・分泌する臓器のことを指します。皮膚科で多く見られる病変を次に述べます。
①糖尿病 糖尿病と関連する直接デルマドロームと、糖尿病によって好発・増強しやすくなる間接デルマドロームの2種類に大別されます。直接デルマドロームにあげられるのが、糖質代謝異常、結合組織代謝異常、血管障害・神経障害の3つです。間接デルマドロームの例として、皮膚掻痒症や湿疹、口角炎等があげられます。
②甲状腺機能亢進症 恒常性機能亢進症の患者さんの皮膚は、血管の血管拡張、皮膚温の上昇、発汗過多など特殊な皮膚病変が生じます。
③甲状腺機能低下症 跡の残らない浮腫(むくみ)が特徴です。皮膚が肥厚し、患部の乾燥もみられます。
その他にも、消化器疾患、黄疸や色素沈着など肝疾患によるもの、乾燥性皮膚や掻痒や疾患が原因のもの、色素沈着や肝斑、脱毛など妊娠によるものなど、デルマドロームもいくつかの種類があります。
本日は、デルマドロームについて紹介しました。もちろん、皮膚病変も軽度の皮疹から悪性腫瘍まで多様です。しかしながら、放置していることで悪性の皮膚病変は進行することもあり、ただのかゆみと思っていたら思わぬ病気がある可能性もあります。
しばらく前から肌のできものが気になっている方や、皮膚病変が良性か悪性かどうか気になる方は、この機会に皮膚科を受診してはいかがですか。
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日付: 2017年11月10日 カテゴリ:未分類